急性心筋梗塞とは

心臓病による死亡原因の約半数は、
心筋梗塞と重度の狭心症です!

日本人の死亡原因の第2位を占める心臓病。 その約半数が、 冠動脈の内腔が狭くなることで起こる「心筋梗塞」や「狭心症」などが原因です。
治療法が進歩しているにもかかわらず、急性心筋梗塞では、約30%の人が死亡しており、その多くは発症後短時間の死亡で、命にかかわる病気の1つといえます。心筋梗塞は多くの場合、 その前段階である狭心症の段階で治療すれば、 防ぐことが可能です。

心臓病による死亡の内訳

心臓病による死亡の内訳 グラフ

心筋梗塞は冠動脈が詰まり、
血液の流れが途絶える病気です。

心臓は、血液を全身に送る“ポンプ”の働きをしています。ポンプとして働くために、心臓の筋肉(心筋)自身も、酸素や栄養を必要とします。その血液を供給するのが、心臓を取り囲むように広がっている「冠動脈」と呼ばれる血管です。この冠動脈で、血管壁が硬くなる「動脈硬化」が進んだりして、血管の内腔が狭くなるのが「狭心症」、完全に詰まるのが「心筋梗塞」です。

冠動脈に動脈硬化が起こると

動脈硬化(アテローム性動脈硬化)とは、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)などが血管壁にたまり、いくつかの過程を経て、プラークというこぶをつくることです。

動脈硬化や血栓などで内腔が狭くなると → 狭心症  血栓で完全に内腔が詰まると → 心筋梗塞

冠動脈の位置

冠動脈の位置 イラスト

「右冠動脈」と「左冠動脈」があり、左冠動脈はさらに2本に分かれます。これら3本の冠動脈は、心臓を取り巻くように存在しています。

狭心症

狭心症は、安定狭心症と不安定狭心症に大きく分けられます。
血栓の有無が、これらの分類のポイントとなります。

安定狭心症

高度な動脈硬化によるもの

高度な動脈硬化によるもの イラスト

プラークが大きくなり、血管の内腔を狭くして、血液の流れが悪くなる。被膜が厚いため、プラークが破れにくい。

冠攣縮によるもの

冠攣縮によるもの イラスト

プラークは比較的小さいが、発作のときに一時的にその部分の血管が強く収縮して、血液の流れが悪くなる。

不安定狭心症

不安定狭心症 いイラスト

プラークの被膜が薄く、そこが破れてできた血栓によって、血管の内腔が狭くなり、血液の流れが悪くなる。心筋梗塞に移行する可能性が高い。

高度な動脈硬化や血管の強い収縮、血栓などが 冠動脈の内腔を狭めると、 心筋が虚血に陥ることになります。

症状

  • 胸が締めつけられる痛み
  • 冷や汗が突然出る
  • 数分~15分くらい発作が続く
  • 安静または薬の使用で発作が改善する

狭心症の発作は、数分~15分程度で治まる。安静にしたり、「ニトログリセリン」という薬を使うと、発作は改善します。

狭心症の症状 イラスト

狭心症の悪化のサイン

「発作が運動時だけでなく、安静時にも起こるようになった」「発作の頻度が高くなったり、発作が継続する時間が長くなった」「発作を抑える薬が効きにくくなった」などの変化があれば、狭心症が悪化している可能性があります。心筋梗塞(急性心筋梗塞)に移行する危険性があるので、医療機関を受診してください。なお、心筋梗塞を起こした人の半数以上が、発症前の1週間以内に、「運動時に苦しかった」などの前兆を感じています。何か前兆を感じたら、医療機関を受診しましょう。

心筋梗塞

プラークの被膜が破れてできた血栓が冠動脈の内腔を詰まらせると、心筋が壊死してしまいます。

心筋梗塞 イラスト

プラークの被膜が破れてできた血栓が、血管の内腔を完全に詰まらせた状態。この状態が続くと、その部位より先の心筋は壊死してしまいます。

症状

  • 胸が締めつけられる痛みが続く
  • 冷や汗がひどくなり、意識を失うこともある
  • 30分以上発作が続く
  • 安静または薬の使用で発作が改善しない

「30分以上発作が続く」「薬を使っても発作が改善しない」「意識が遠のく」「いつもより痛みが強い」などの場合は、心筋梗塞(急性心筋梗塞)の可能性があるため、すぐに救急車を呼びましょう。

心筋梗塞の症状 イラスト

検査と診断

狭心症や心筋梗塞が疑われたら、「問診」で症状を詳しく聞きます。さらに「心電図」で心臓の電気的な活動の状態を調べたり、「心エコー」で心臓の動きを見たり、「血液検査」で心筋の壊死の有無を調べます。また、病状をより詳細に確認するために、「マルチスライスCT(コンピューター断層撮影)」や「カテーテル検査」によって冠動脈を撮影したり、病状によっては「心筋シンチグラフィー」などを行うこともあります。

基本となる検査など

問診で症状を詳しく聞き、心電図で心拍の異常の有無を確認する。心筋梗塞の場合、心筋が壊れて、心筋に含まれている酵素が血液中に流れ出てくるので、血液検査でその酵素の有無を調べる。

  • 問診
  • 心電図
  • 血液検査
  • 心エコー

より詳しく調べる検査

冠動脈の血液の流れの状態をより詳細に調べるために、次のような画像検査を追加して行うことがあります。

マルチスライスCT

マルチスライスCT イラスト

「320列マルチスライスCT」では、心臓全体を短時間で鮮明に撮影することができます。
左冠動脈の前下行枝が狭窄しています(画像の丸の部分)。
(画像提供:藤田保健衛生大学病院)

カテーテル検査

テーテル検査 イラスト

「カテーテル」という細い管を、手首や脚の付け根の血管から冠動脈まで挿入し、造影剤を注入して冠動脈の血流の状態をみます。
左冠動脈が2つに分かれた後の、左冠動脈冠動脈前下行枝という一番大事な冠動脈の根元に近い部分が狭窄しています(画像の丸の部分)。
(画像提供:藤田保健衛生大学病院)

その他「心筋シンチグラフィー」などを行うことがあります。

トップへもどる